例えばそれが詩というか。

ネット詩人、5or6。若いミュージシャンを応援したり、ラーメン食べたり、詩を書いたり。

アイツとスペランカー

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「アイツとスペランカー

 


アイツの二階部屋にはスペランカーがいつもファミコンに刺さったままだった。

何で?と聞くと

抜き差し面倒だから

といつも沢山のカセットを両手で払いのけて俺の席を作ってくれた

アイツは夜にスペランカーを差し替えてくれていた

アイツはやらずに俺のプレーばかり見て

お前はすぐ死ぬな

と笑っていた

そんなアイツが俺より先に死んだ

自殺だった

少しの段差で死ぬスペランカーのようにあっけなく死んだ

アイツの二階部屋は子供の頃しか行ってない

俺は何年も会ってなく

久しぶりに会ったのは同窓会の時だった

お前ハゲたな

俺は離婚したよ

スペランカーやったな

ああ懐かしいな

お前すぐ死んだな

そうだな

また会おうな

アイツは昔のまま笑って

そして手を振って去っていった

それから一ヶ月後

同じ仕事仲間の同僚からアイツが自殺したと聞いた

朝のラジオ体操の時だった

青空だった

アイツの通夜も葬式も知らなかった

アイツは俺より先に迷宮に旅立っていった

アイツはいつも俺より先に迷宮をクリアしていた

アイツはいつも俺の先に行くのが好きだった

お前はすぐ死ぬな

そういって笑い

攻略の仕方を俺に教えてくれた

そういう奴だった

アイツは俺の先に行き

俺に追いつかれるのが嫌だった

そんな俺がスペランカーをクリアした時

アイツは余韻を楽しむまでもなくカセットを無動作に引き抜き

新しいゲームをいれた

次はコレな

そういって俺にやらせようとした

俺は

そろそろ帰るよと立ち上がって帰ろうとした

また明日な

そういって俺は手を振った

俺は

スペランカーが終わったら次は違う奴の家にあるカセットをやろうと思っていた

アイツは気づいていたのかわからないが

何も言わず手を振ってゲームを始めた

それが最後だった

アイツはもういない

そんなに仲良しでもなかったが友達で

幼馴染で

ゲーム仲間だった

いや仲良しだったな

とにかくアイツは憎たらしかった

何十年も忘れていたが会ったら懐かしかった

そんなアイツと

スペランカーの思い出。