小さな命が産まれそうな朝に
俺は仕事に行ってしまった
嫁は我慢する長女で
俺は末っ子
本当は引き止めたかったはずだけど
嫁は我慢してくれた
親方が熱をだして
遠くの現場だったから
休めなかった
産まれたのはお昼頃で
病院の先生からだった
嫁は無事だったが
赤ちゃんはすぐにICUに連れてかれた俺は結局早退して
新幹線で戻り
嫁の産婦人科に行った
赤ちゃんが隣にいない
嫁は落ち込んでいた
俺は何とか嫁と赤ちゃんを一緒にしたかった
それしか頭になかった
赤ちゃんのお尻にコブがあったとしか聞いてなかったから
大した事ないと励まして
総合病院に行き
ガラス越しに赤ちゃんを見た
小さくて一人で寂しそうだった
妻になんて言ったらよいのか
集中治療室の赤ん坊は小さく元気に泣いていた
見た目は普通なのに
小さなコブが出ているだけなのに
それから先生に会い
話を聞くと
娘は二分脊椎という病気だった
神経が脊髄から飛び出していて手術をしなくてはいけない
一生
障害が残ると言われた
頭が真っ白になった
車で30分
妻の元に向かい事情を話すとしょんぼりした顔をして
ごめんね
と一言だけつげた
俺は何故こうなったのか調べた
野菜を食べなかったからだと妻に怒ったりした一番してはいけない事をしたと後で反省した
不安だった
神社にお参りもした
それから妻が動けるようになり
二人で赤ん坊のいる病院に向かった
元気な姿を見て泣いた
初めて妻は自分のおっぱいを当てて赤ん坊にミルクをあげた
誰かに教えられたわけでもなく
当たり前に吸う娘を見て
どんな結果でも受け入れる覚悟をもった
手術は8時間かかった
こんな小さな体で何時間も耐えれるんだろうかだけど赤ちゃんは力強く耐えて
無事に成功した
やはり排出器官が弱く導尿はしなくてはいけなくなったがそれ以外は左足が弱いだけで元気に育ってくれた
リハビリのおかげで今は自転車も漕げるようになった
元気に生きている
時々ふと思い出して嫁は娘が生まれる時
貴方は仕事に行ってそばにいなかったと怒る
だけど俺は立ち会わなかった事を後悔はしてない
もし一緒に付き添っても部屋に入らなかっただろう
怖くて外にいただろう
父親が怖かったのかもしれない
だから反論しないで患者のように嫁の言う事を聴いて生きている。
P.S娘へ
お誕生日おめでとう
お前は俺の全く想像もしてなく予定外だった可愛さと病気を抱えて生まれてきてくれた
いつまでも愛しているよ
お前の父親より。