例えばそれが詩というか。

ネット詩人、5or6。若いミュージシャンを応援したり、ラーメン食べたり、詩を書いたり。

Patient

 

 

小さな命が産まれそうな朝に
俺は仕事に行ってしまった
嫁は我慢する長女で
俺は末っ子
本当は引き止めたかったはずだけど
嫁は我慢してくれた
親方が熱をだして
遠くの現場だったから
休めなかった
産まれたのはお昼頃で
病院の先生からだった
嫁は無事だったが
赤ちゃんはすぐにICUに連れてかれた俺は結局早退して
新幹線で戻り
嫁の産婦人科に行った
赤ちゃんが隣にいない
嫁は落ち込んでいた
俺は何とか嫁と赤ちゃんを一緒にしたかった
それしか頭になかった
赤ちゃんのお尻にコブがあったとしか聞いてなかったから
大した事ないと励まして
総合病院に行き
ガラス越しに赤ちゃんを見た

小さくて一人で寂しそうだった

妻になんて言ったらよいのか

集中治療室の赤ん坊は小さく元気に泣いていた

見た目は普通なのに

小さなコブが出ているだけなのに

それから先生に会い

話を聞くと

娘は二分脊椎という病気だった

神経が脊髄から飛び出していて手術をしなくてはいけない

一生

障害が残ると言われた

頭が真っ白になった

車で30分

妻の元に向かい事情を話すとしょんぼりした顔をして

ごめんね

と一言だけつげた

俺は何故こうなったのか調べた

野菜を食べなかったからだと妻に怒ったりした一番してはいけない事をしたと後で反省した

不安だった

神社にお参りもした

それから妻が動けるようになり

二人で赤ん坊のいる病院に向かった

元気な姿を見て泣いた

初めて妻は自分のおっぱいを当てて赤ん坊にミルクをあげた

誰かに教えられたわけでもなく

当たり前に吸う娘を見て

どんな結果でも受け入れる覚悟をもった

手術は8時間かかった

こんな小さな体で何時間も耐えれるんだろうかだけど赤ちゃんは力強く耐えて

無事に成功した

やはり排出器官が弱く導尿はしなくてはいけなくなったがそれ以外は左足が弱いだけで元気に育ってくれた

リハビリのおかげで今は自転車も漕げるようになった

元気に生きている
時々ふと思い出して嫁は娘が生まれる時

貴方は仕事に行ってそばにいなかったと怒る

だけど俺は立ち会わなかった事を後悔はしてない
もし一緒に付き添っても部屋に入らなかっただろう
怖くて外にいただろう

父親が怖かったのかもしれない

だから反論しないで患者のように嫁の言う事を聴いて生きている。


P.S娘へ

お誕生日おめでとう

お前は俺の全く想像もしてなく予定外だった可愛さと病気を抱えて生まれてきてくれた

いつまでも愛しているよ

お前の父親より。