もうこの世にはいないように
白い墓標の文字を眺めている
すると小さな手が払いのけて
絵本を読んでとせがんでくる
漂う意識は
もう我が子を眺めるしか
楽しみがないのかね
幽体離脱をしたまま
いもほりの本を読んで
誰もいない場所で
子供が笑う
返事はしないまま
おやすみと声をする
返事のないまま
おやすみと灯りを消す
誰もいないまま
食卓の食器を片付ける
自動食洗機の音が鳴る
ガタガタ・ガタガタ
寝床を見ると
妻と子供が寝ている
手を見ると
昨日仕事で付けた切り傷がある
寝返りをしすぎて
あらぬ方向の我が子を見る
妻は反対に寝ている
散らばっている絵本を掴もうと
手を伸ばし
開いたページを見てみると
そこに妻と子供が寝ていて
実際の寝床は誰もいない
一人用の布団が
。