例えばそれが詩というか。

ネット詩人、5or6。若いミュージシャンを応援したり、ラーメン食べたり、詩を書いたり。

餃子屋・リー。

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踏切事故防止キャンペーンの期間中に駅前の商店街は軒並みシャッターを下ろし、
交差点に一軒だけ開いている中華料理屋の店長は中国人。
店前に屋台を出し、ニンニクの効いた餃子の美味しそうな匂いを溢れさせて、隣がシャッター閉まっているのをいいことに、これでもかと匂いを撒き散らして、
アイヤー!
と、餃子を焼き続けて、山のように餃子の箱を積み上げ、疎らなお客にアピールしながら餃子を焼き続けて、
アイヤー!
と、疎らなお客に餃子を売るのだが、
ちっとも売れない。

アイヤー!

中国人の店長はタイムサービスだと値段を下げて、勢いよく餃子を焼き続け、
アイヤー!
と、渾身の力で胸を叩き、そして何故か苦虫を噛み潰した顔をして、体を小さく震わせた。
餃子、さっぱり、売れない。

アイヤー!

中国人の店長は屋台の中から飛び出し、閉まっているシャッターを片っ端から蹴り上げて鬱憤を晴らすと、
アイヤー!
と、渾身の力で胸を叩き、そして何故か苦虫を噛み潰した顔をして、体を小さく震わせた。
餃子、百円に、するね。
もはや採算など考えなかった。
これは聖戦である。
華人民四千年の歴史を、たかだか百年に一回の不況によってコケにされてたまるかアルヨ!

アイヤー!



上着を頭にかけられて、両手に手錠をかけられて、
店長がパトカーに連行されていく。
どうやら近所の住民達に、うるさいと通報されたらしい。
最後の客の俺は餃子の袋を握り締めながら、店長の乗せたパトカーを、桜の舞う坂道に消えていくまで、眺めていた。

ずっと眺めていた。