例えばそれが詩というか。

ネット詩人、5or6。若いミュージシャンを応援したり、ラーメン食べたり、詩を書いたり。

テレパシー

夕暮れのような色のペンシルをポキンと折って蝉の抜け殻を描いている。
尖るようなタイマーの音を優しく揉みほぐすようなダージリンティーの香り、もうすぐ娘が帰宅する時間だ。
しかしながらシクラメンの枝が何本も萎れたかのように肩透かしの通販番組がテレビから離れない。
犬の鳴き声が聞こえ始める。
もう娘が玄関を開けるタイミングだ。
庭に植えた球根から芽がでたのと同時に空から自衛隊のヘリコプターが回り始める。
までは適切な平穏だった。
風が回覧板を飛ばして近所のニートの機嫌を取り繕う。
意地悪な末っ子だったのは都合が悪いからだろうか、肉体は常に南東に正面を保ち、キャベツを細かく切っていく。
ぼんやりと一日を振り返ってみる。
何のことはなかった。
何の問題もなかった。
ただ気持ちがざわついていただけだった。
不安でパニックになってほんの数秒痙攣したりしただけだった。
誰もいなかった。
見てなかった。
必死に商品の安さをアピールする声と電話番号が耳から流れ落ちていく。
ゼロ、イチ、ニー、ゼロ、サン、サン、イチ、ニ、サン、イチ、ニ、サン、イチ、ニ、サン、イチ、ニ、サン、イチ、ニ、サン、イチ、ニ、サン。
イチ、、ニィ、、、サン、、、、。
ペースメーカーを取り出して正常な脈にして欲しいと願う。
身も蓋もない。
何のことはなかった。
何の問題もなかった。
ただ気持ちがざわついていただけだった。
誰もいなかった.
とは思えなかった。
のは事実だったのに。
なんてことはなかった。
そう。
全ては伝わらなかった。
夕暮れのような色の蝉の抜け殻をポキンと折ったペンシルで描いている。
これが真実だった。