例えばそれが詩というか。

ネット詩人、5or6。若いミュージシャンを応援したり、ラーメン食べたり、詩を書いたり。

Princeという人間について。

f:id:dai5or6:20190607023056j:plain プリンスの出会いはバットマンのサントラの収録曲、バットダンスだった。中学生の時、15歳の頃、日本の曲が流れている有線からは絶対に流れないだろう異質なスネアのひしゃげた音とリズム。映画からのセリフがサンプリングされてまるで音のコラージュのような構成、聞いたことのあるバットマンの掛け声とロックなギターソロ。どれも聞いたことの無い、聞いたことがある音で作られたメロディーで作られた唯一無二の曲、バットダンス。この曲で琴線に触れた俺はレコードレンタルショップでプリンスの音楽を借りて聞いてみた。印象はペラペラな薄いビニ本みたいな感覚。音も少ないし、安っぽいシンセ音に弱いファルセット声、当時九十年代の音は重なる音が多く、ダーティーマインド、プリンス、フォーユーの過去から遡って聞いてみると明らかに物足りなさを感じていたが、それでも何かが引っかかっていた。 当時のアルバムは日本語訳がなく、英語のみ、中学生の俺はわかるわけはないがそれでもエロさは感じていた。意味はわからないが何故かムラムラする。なんなんだろうこの思春期をくすぐる声は、何回も聞いているうちに突然と聞いてないのに頭にメロディが鳴る時があった。あれ?このフレーズなんだっけ?帰ってもう一度アルバムを聴くと今まで聞いていた曲がすっぽりとハマる。ヘッドだ!歌詞の意味はわからないがなんかエロい。エロいしファルセットだし、どんな人だろう?ビジュアルはあまり知らなかったがアルバムジャケットを見ると裸姿ばっかりで毛むくじゃらでヒゲ生えているのにファルセット声。意味わからん。これが変態というものなのか? イケナイ世界に入っていく罪悪感、気持ち悪さと音楽の心地よさが俺には魅力に感じた。そして次のアルバム、戦慄の貴公子のコントロバシーで格好良さがスンナリと身体に伝わった。あのシンセの不気味なリフレインと繰り返すギターのカッティングとリズム。そしてコントロバシーと投げかけていく歌い方。すっかりトリコになった俺は歩いている時もあのリズムで歩き、途中で、コントロバシ!と言ってしまうほどだった。こうなると止まらない。何故ならプリンスを知った時、既にアルバムは10作品もあったし次のアルバムはどうやらまた映画のサントラ、しかも彼が監督した作品で来日する予定もあるらしい。これはいかん、残りの作品も、聞かなくちゃ!と一気にアルバムを買って聴く。当時のアルバム二千円から三千円、三万円近くのお金が一気に無くなり無一文になったが満足だった。1999で初めてMVを知り、こまわり君みたいな格好に驚きと興奮を隠せないオートマティクで初めてムチで叩かれるシーンを見て、こんな事してもいいんだ。と感動したりした。そして遂に手にするパープルレイン。みんなが名作と言っている中、俺は中学生ながらあえて避けていた作品。一種の反抗期だったのかもしれないが、とにかく時は来たのだ。(橋本真也)姉貴が買ったソニーのCDコンポにパープルレインを入れてその場に座り歌詞を見ながら聴く。この時は日本語訳が載っていた。いきなりプリンスの演説が始まる。シンセサイザーが新時代の幕開けを告げる。そしてドラムが鳴り響きギターが爆発する。クレイジーになっちゃえよ!明らかに、今までとは違う開放感とグルーブがこのアルバムに詰まっていた。確かに今までの閉鎖的なサウンドでは無い心の壁が開かれたような、そんな清々しさがあった。何故だろう?映画見ないとわからないなぁ。と歌詞を見ながら自分で勝手に物語を考えながらアルバムを聴いていく。ライブで演奏したキッドがバイクでドライブするんだな、次はバラードで恋人とイチャイチャするんだな、時々変態な事もするんだな、上手くいかなくなるよなそりゃ、だけどなんだかんだ仲直りするんだろうな、という流れを感じながら最後に流れるギター音。ジャラーン。B♭の3度を2度に置き換えたコード、ここから思い出したかのようにプリンスが早口で告げる。あなたを悲しませたくはなかった。まるで雨が降っているような感覚が確かに身体に感じる。音が映像を映すのだ。まるで映画を見たようなアルバムに俺は感動して、最後涙が流れていた。さだまさしを聞いた時も涙が流れたが、英語の曲で涙が出たのはこれが初めてだった。あんなに避けていたアルバムだったがまんまとハマってしまった。名作だった。みんなが言っているのは間違いなかった。今でも忘れられない日。バットダンスを聞いた日と、パープルレインで泣いた日。この日があるから今日の俺がいるんだろう。これから三十年近く、プリンスを追いかける日々が始まるなんて思いもしなかったが、出会えて悔いは無いアーティストで本当に良かったと思っています。誕生日おめでとうございます。プリンスの還暦、見たかったなぁ。